放送大学 千葉学習センター

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放送大学 千葉学習センター

住所:千葉県千葉市美浜区若葉2-11MAP
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【放送大学千葉学習センター/学びの先輩に聞く】
学問を極めるために博士課程へ。生みの苦しみを味わった論文執筆奮闘記

放送大学 千葉学習センター

3年前

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放送大学 教養学部 選科履修生(千葉学習センター)/篠﨑 一成氏


 社会人のための生涯学習機関として1981年に創設された放送大学。テレビやラジオ、インターネットでの講義に加え、各都道府県に置かれた学習センターでは一般大学と同様に対面式授業(面接授業)も行われており(※)、大学開設からこれまでに延べ130万人以上が卒業している。

 放送大学の大学課程は、教養学部教養学科のみの1学部1学科。教養を養うと共に実生活に即した専門的な知識を得ることが可能だ。学部には社会と産業コースのほか、生活と福祉コース、人間と文化コースなど6つのコースを用意。大学卒業資格を満たす全科履修生や、好きな科目だけを選べる選科履修生など3通りの履修スタイルが選べる。

 今回インタビューを行った篠﨑氏は千葉県美浜区にある千葉学習センターに在籍し、この春、念願の大学院博士課程を修了した。2018年に続いて2度目の登場となる篠﨑氏に、博士論文を執筆していた頃の苦労話や現在の心境を聞いてみた。

※新型コロナウィルス感染症の拡大、緊急事態宣言の状況により随時オンライン授業を開講中。

2018年のインタビューはこちらから ⇒ https://sc-ouj-chiba.onionworld.jp/news/1174


民法改正をきっかけにリカレントを決意し放送大学大学院へ

 法学部出身だった篠﨑氏は明治時代に制定された民法(債権法)が大改正される聞き、「もう一度法律を学び直したい」と通信制大学を探した。そこで地元・千葉にある放送大学を知り、開講項目の豊富さにひかれて、2012年10月に「修士選科生」として入学した。修士選科生は1年かけて修士課程を履修するコース。篠﨑氏は選科生として入学し、2014年4月からは修士号取得を目指す「修士全科生」に進んだ。

 「そこから2年で修士課程を無事に終えたのですが、どうも私の中で納まりがつかなかったんですよね。博士というステージへの憧れもあったかも知れません」。

 2016年3月に修士課程を終えた篠﨑氏は、博士課程への挑戦を決意した。


1年の準備期間を経て博士課程へ。仕事と博士論文に追われる生活 


放送大学の博士課程は、1年に10名ほどしか進学できないほどの狭き門。篠﨑氏の専攻していた生活健康科学プログラムの進学倍率は15倍ほどあったため、1年の準備期間を経て2017年4月、博士課程に進学。それは同時に、仕事を続けながら3年間で博士論文を書き上げるという過酷な学生生活の始まりでもあった。

 「土曜日なると国会図書館にこもって先行研究を片っ端から調べていました。先行研究を見るというのは、私の論文テーマがどう論じられてきたかを確認する作業です。先人たちの考えから執筆のヒントをいただくこともありますし、研究内容の重複、いわゆるネタかぶりを回避する目的もあります」。

 篠﨑氏が論文のテーマに選んだのは不動産取引。宅地建物取引業者(宅建業者)と買主の双方にヒアリングを行い、さらには過去の文献を参考にしながら住宅取引にまつわる実情を論じたものである。国会図書館での先行研究リサーチで篠﨑氏が目を通した文献、論文は、3年間で約250本にのぼった。


博士論文4要件という壁を前に、留年という大きな決断を下した

 博士課程1年目から複数の学会に所属し、論文を発表しながら博士論文の準備も精力的に進めてきた篠﨑氏。3年目の6月に予備論文を提出し、その審査を通過した学生だけ博士論文の執筆に取り掛かれるのが放送大学でのステップだ。12月に提出した本論文の審査(口頭試問)に通れば、晴れて博士課程修了となる。

 3年目を迎えてもなお、論文の筋道が定まらない篠﨑氏。論文指導教員の奈良由美子教授に相談すると、背骨の通った論文を心がけるよう指摘された。

 「博士論文に必要な4要件(論理性・客観性・独自性・体系性)を満たしていませんよ、という事です。頭の3要件だけでいいのは修士論文までで、博士論文は体系性が重視されます。研究内容を章立てしてまとめいくのが論文執筆の基本的なセオリーですが、博士論文には各章を貫く背骨(軸)が必要。私の論文からは背骨が見えてこないとの指摘です。登山でいえば、山頂の位置は分かっているけど山の登山ルートが定まっていないわけです」。

 先行研究を踏まえ、自分なりの筋道を立てて山を登っていたつもりだったが、それは間違いだった現実。論文の背骨を練り直すとは、1年目から必死に集めた先行研究や文献のほとんどを捨てる事を意味していた。3年で書き上げるのは不可能と判断し、1年間の留年を願い出た。


指導教員のおかげで通過できた予備論文。突然の狭心症判明と手術

 そして迎えた4年目。博士論文の指導教員は主査の奈良教授に加え、副査に坂井教授を迎え、鉄壁の2教員体制で予備論文提出に向けてのサポートが始まった。5月には論文の背骨もようやく見え、約200の宅建業者から戻ったアンケート回答の集計を始めた。平日は夜しか時間を充てられないため、夜中の2~3時まで机に向かうのが当たり前の生活に。そうした努力の甲斐もあり、6月の予備論文提出にぎりぎり間に合わせることができた。

 「先生方から沢山のアドバイスをいただき、背中を強く押してもらえました。予備論文の審査を無事に通過できたときは、さあここからが本番だ!と身が引き締まりましたね」。

 夏から本論文に着手していた篠﨑氏だったが、10月になるとしきりに胸の奥が痛むように。寝不足が原因だろうと高をくくっていたが、それでも日々続く痛みに不安を覚えていた。11月に入ったら一度診察を受けよう。痛みを忘れるため、さらに論文の準備に没頭していった。

 11月2日、ようやく休みの取れた篠氏は地元の病院でCT検査を受け、心臓の冠動脈が細くなっていると判明。病名は狭心症だった。

 「放っておいたら命に係わるから、この後すぐに手術をしますと。まさか自分が狭心症なんてビックリしましたよ」。

 すぐにステント手術を行い、翌3日に退院。再び論文の執筆に戻った。

 「6月の予備論文の時期だったり、12月の本論文提出と重なったりしたら、もう退学するしかなかったでしょうね。あのタイミングでの手術は運が良かったとしか言えません」。

 術後の経過は良く、胸の痛みも消えてさらに論文に集中できたと振り返る篠﨑氏。退院後は遅くとも深夜0時に寝るとルールを決め、12月の提出期限に向けて執筆を続けた。


念願の博士号取得!そして55歳の今、新たな挑戦を始めた

博士論文とともに。篠﨑氏の胸元には、放送大学イメージキャラクター「まなぴー」のピンバッジが光る。


2021年1月、オンラインで開かれた口頭試問。前月に書き上げた博士論文「住宅取引における宅地建物取引業者の機能と限界に関する研究」を発表する場である。画面の向こうに集まった教授、指導教官らを前に、4年間の研究成果を披露した。結果は合格。念願の博士号を取得し、修士課程から数えれば9年間にわたる放送大学での学びを終えた。

 「私の研究テーマは、仕事と直接関係するものです。まとめた論文を業界や官界などの関係者に読んでいただき、不動産市場や業界の改善のための参考データにしてもらえたらと思っています」。

篠﨑氏の博士論文は放送大学の公式サイトにて閲覧できる。 ⇒ 論文を見る


 そして迎えた2021年度、篠﨑さんは教養学部の選科履修生として千葉学習センターに通っている。博士論文を執筆するために集めた膨大なデータや原稿をもとに、新たな論文の執筆に取り掛かかっているのだ。

 「4年でだいぶ燃え尽きたという実感はあります。だけど、まだまだ学び足りないんですよね。博士課程でだいぶシャカリキになってやって来たから、久しぶりにのんびり好きなことを学んでみようかなって。またいつか興味を持てる分野が見つかったら、とことん極めるつもりです」。

 通信制大学として始まった放送大学ではオンライン授業を充実させ、2020年から続く新型コロナ禍においても学びに支障のない環境を整備。仕事をしながらのリカレント教育、定年後のセカンドライフを充実させる生涯教育の場として、幅広い年齢層の学生が思い思いの学生生活を謳歌している。


 篠﨑 一成/しのざき・かずなり

1966年、千葉市生まれ。大学を卒業後、長年にわたり不動産業界で活躍。2012年10月、修士選科生として放送大学に入学し、2021年3月に博士課程を修了。同4月より選科履修生として在籍している。


※コロナウイルス感染予防対策を徹底の上、取材を行っております。

※この記事は2021年6月現在の情報をベースに作成し、更新しております。内容が変更になっている場合もございますので、詳細は放送大学または、放送大学千葉学習センターの公式ホームページをご確認ください。

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