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【放送大学千葉学習センター/学びの先輩に聞く】
20年目の自己実現。博士後期課程を修了した今思うこと
放送大学 千葉学習センター
3年前
放送大学大学院 文化科学研究科 文化科学専攻 博士後期課程修了(千葉学習センター)/森 信洋氏
社会人のための生涯学習機関として1981年に創設された放送大学。テレビやラジオ、インターネットでの講義に加え、各都道府県に置かれた学習センターでは一般大学と同様に対面式授業(面接授業)も行われており(※)、大学開設からこれまでに延べ130万人以上が卒業している。
放送大学の大学課程は、教養学部教養学科のみの1学部1学科。教養を身につけると共に職場や実生活で活かせる専門的な知識を得ることが可能だ。用意されている学部は「社会と産業コース」のほか「生活と福祉コース」「人間と文化コース」など6種類。大学卒業資格を満たす全科履修生や、任意の科目だけを選べる選科履修生など4通りの履修スタイルが選べる。
鴨川市の総合病院に勤務する森信洋氏は、20代後半で千葉県美浜区の放送大学・千葉学習センターに編入学。仕事と研究を両立させながら博士論文の執筆という大きな課題に向き合い、2021年3月に博士後期課程を修了した。20年近くにわたる学生生活を通して森氏が得た物とは?本人にじっくりと話を聞いてみた。
※新型コロナウィルス感染症の拡大、緊急事態宣言の状況により随時オンライン授業を開講中。
職場で活用できる高度な知識を得るため放送大学博士課程に入学
博士論文の執筆にあたり図書館を有効活用した。
「私が所属している集中治療室には、重症患者が運ばれてきます。そこで働く医師や看護師はとても優秀で、いわば病院内の精鋭が集まるようなとてもレベルの高い職場です。2年前から新型コロナが始まって、業務は以前にも増してハードになりました」。
南房総の穏やかな景色に囲まれた鴨川市にある総合病院に勤務する森信洋氏は、キャリア27年目の臨床工学技士として医療機器の操作を担当している。扱っているのは人工呼吸器や人工心肺装置、透析装置といった生命維持に欠かせない精密な機器ばかり。そのため、毎日の点検や保守、時には修理を行うなど卓越した技術と知識が必要となる。森氏は2016年に透析室から集中治療室へ異動し、医療の最前線で過酷な日々を過ごしている。
「私の使命は、人の命に関わる機器類を安全かつ正確に操作することです。その安全性を確保するために客観的なデータを蓄積して分析あるいは評価できるデータベースを開発しよう。それを現場に活かせれば医療の質を上げられるんじゃいかと思ったんです」。異動から2年後の2018年、森氏はそんな志を抱いて放送大学博士後期課程に入学した。
社会人になってから「学びたい」と一念発起。3年次編入で大学生に
勉強に集中できるよう図書館には自習ブースも完備されている。
森氏が放送大学に籍を置くのは、実はこの時が初めてではなかった。社会人になりしばらく働いた27歳の時に放送大学に編入学し、そこから十数年をかけて修士課程まで修めているのだ。
1974年、福島県南相馬市(当時は原ノ町市)に生まれた森さん。県内の高校を卒業後は仙台市にある専門学校へ進学し、1995年に臨床工学技士の国家資格を取得した。「仕事を続けていくうちに『もっと知りたい』という思いが強くなっていきまして。働きながら専門的に学ぶならどこが良いのかと考えた時に、放送大学のテレビコマーシャルを思い出したんです」。
専門学校を卒業していた森氏は3年次編入で2001年に入学し、5年間で62単位を取得して卒業。その翌年には実家のある南相馬市の病院へ転職し、ほどなくして修士課程へと進んだ。社会人として収入を得ながら無理なく勉学に打ち込める放送大学は、誰もが自分のペースで着実にステップアップしていける魅力的な場所と森氏は語る。
恩師と5年振りの再会。博士後期課程は別次元の厳しさを実感
2011年3月11日に発生した東日本大震災。森氏の暮らしていた南相馬市は大きな被害を受け、避難準備区域に指定された。再び鴨川に戻った森氏は2013年に修士課程を修了。「当時の放送大学にはまだ博士課程がなかったんです。数年のうちにできるという噂があったので、それまで待っていようと仕事にウェイトを置いて生活していました」。
そして迎えた2018年、より専門的な知識の習得と論文執筆を目指すため博士後期課程に入学。修士課程で師事した川原靖弘教授と5年ぶりの再会を果たし、自身の研究を進めた。博士課程で求められるのは新規性(先進性)と独自性のある研究と、それを社会に資することと振り返る。
森氏が博士研究の題材にしたのは、前述の通り“医療機器の安全性を確保するために客観的なデータを集約し、分析・評価できるデータベースを開発”すること。川原教授のもと膨大なデータモデルを定義し、複数の医療施設で共用できるデータベースを新たに構築していった。「博士論文は論理的かつ明快に示さなければなりません。この点は修士論文と大きく異なります。短期間に取り組むだけでは到底やりこなせる代物ではなく、毎日3~4時間ずつ積み重ねていくことが重要と実感しました」。
効率と集中力を向上させるために生活リズムを抜本的に見直し
ハードな集中治療室勤務と並行して進めていった博士論文。タスクを効率良くこなすために生活リズムを見直し、起床4時・就寝21時という朝型生活に変えていったそう。「仕事から帰るとクタクタになってしまって机に向かうこともままなりません(苦笑)。なので、思い切って朝型に変えて出勤するまでの間に研究の継続性と集中力を最大化させていきました。私にとってはそれがベストでしたね。途中、新型コロナが始まって精神的にもしんどい2年間でしたが、それでも途中で投げ出さずにやれた理由のひとつは、朝型にしたおかげと思っています」。
そうした努力の甲斐あり、博士論文「集中治療室における敗血症に着目した医療機器情報データモデルの研究」を発表。2021年3月に博士学位を授与された。
博士課程での生活を通じて心に決めた、生涯研究者であること
新型コロナが流行して以降、教職員とはオンラインでやり取りする。
現在、森氏は鴨川市にある「亀田総合病院」の集中治療室に勤務しながら、客員研究員として亀田医療大学にも所属している。博士論文を発表してからも、継続的に学会発表と論文を投稿し、臨床工学技士・研究者として精力的に活動している。朝4時に起床する生活スタイルは今も継続中だ。「放送大学の博士後期課程では『この先もあなたは研究者であり続けられますか?』と問われている気がします。臨床工学技士は医療機器を管理する視点から科学的根拠に基づいた問題の提起と課題解決を提案し、現場で医師や看護師をはじめ多くの医療スタッフと密に連携していく必要があります。博士後期課程での学びから私自身大きく成長できたと実感していますし、今後は研究者として立ち回るのはもちろん、臨床工学技士として医療の質の向上に努めていきたいと思っています」。
インタビューの終盤で放送大学の魅力について質問すると「価値観や指向性といった人の在り方がこれだけ多様化した現代において、放送大学は自己実現のための最適解です」と真っすぐな目で語る森氏。“生涯学習”を基本理念に掲げ、それぞれの知的好奇心を満たしながら意識変容と行動変容を促してくれる学習環境は素晴らしいと付け加えた。
新型コロナの流行を機に、インターネットによる講義を拡充するとともに試験もオンライン化するなど、時勢に応じた対策を講じている放送大学。学ぶことの喜びを求め、今年もまた多くの社会人がこの門をくぐることだろう。
千葉学習センターの入口にて。
森 信洋/もり・のぶひろ
1974年、福島県南相馬市生まれ。臨床工学技士として鴨川市の総合病院に勤務する傍ら、2002年に放送大学編入学。修士課程を経て2021年3月に博士後期課程を修了。亀田医療大学総合研究所客員研究員。
※コロナウイルス感染予防対策を徹底の上、取材を行っております。
※この記事は2022年3月現在の情報をベースに作成し、更新しております。内容が変更になっている場合もございますので、詳細は放送大学または、放送大学千葉学習センターの公式ホームページをご確認ください。
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さん、ありがとうございます!
写真を受信しましたので、こちらで確認を行います。